「居抜き物件なら設備そのままで、前の店の深夜営業の届出も引き継ぎ可能?」――バー開業を検討される方から、このようなご相談をいただくことがあります。

しかし、保健所の飲食店営業許可は令和5年の法改正で承継可能になりましたが、警察署への深夜営業の届出は多くの場合引き継ぐことができません。

さらに要注意なのは、前オーナーが「廃業届」を出さずに閉業している場合です。この状態では、あなたの新規届出が受理されず、開業スケジュールが大幅に遅れる可能性があります。

当事務所は大阪を中心に深夜営業の届出を取り扱う行政書士事務所です。この記事では、居抜き物件特有のトラブルと、その実務的な解決策を解説します。

深夜営業の届出が引き継ぎ不可の理由

保健所の許可と警察の届出の決定的な違い

居抜き物件での開業において、最も誤解されやすいのが「保健所」と「警察」の手続きの違いです。

【保健所】飲食店営業許可=承継可能に

令和5年12月の食品衛生法改正により、事業譲渡の場合は「営業許可の承継」という手続きが新設されました。これにより、以下の条件を満たせば保健所の許可を引き継げます。

  • 譲渡契約書など承継の事実を証明できる
  • 設備基準を満たしている
  • 承継の届出を期限内に提出する

【警察】深夜営業の届出=承継制度なし

一方、深夜営業の届出には承継規定が存在しません。なぜなら「許可」とは違い、地位を付与する性質のものではなく、一定の事項を警察に「通知」する性質のものだからです。

「名義変更」という手続きは存在しないことを、まず押さえておいてください。

前の店の廃業届が出ていないとどうなる?

警察署は「二重登録」を認めない

居抜き物件での厄介なトラブルが、前オーナーの廃業届未提出問題です。

警察署は「同一店舗区画に複数の深夜営業届出が並立する状態」を認めません。データベース上、その場所には既に届出が存在するため、あなたが新規で届出を持参しても、

「この住所は既に別の方の名義で届出が出ています。前の店の廃業届が提出されるまで、新規届出は受理できません」

と窓口で断られるケースがあります。実際に当事務所でも、旧オーナーが廃業届を出さなかったことによって、警察で手続きが出来ずに困ったことがあります。

メモ:ちなみに廃業届は10日以内に出す必要があり、これを怠ると50万円以下の罰金に処される可能性があります。知らなかったでは済まされませんので、廃業する際には注意しましょう。

開業スケジュールが大幅に遅れるリスク

前オーナーと連絡がつけば、協力を得て廃業届を出してもらうことで解決します。しかし実務上は、

  • 連絡がつかない
  • 夜逃げ同然で閉業している
  • 「面倒だ」と協力を拒否される

といったケースもあります。

こうなると、警察が「前の店が実在しないこと」を確認するまで、あなたの届出はストップしてしまいます。内装工事は終わっているのに営業できない、家賃だけが発生し続ける――こうした事態は避けなければなりません。

廃業届未提出への実務的対処法

疎明資料を用いる

前オーナーと連絡がつかない場合は、適切な資料を揃えることで「事実上の廃業」を警察に認めてもらいます。

※管轄の警察によって取扱いは全く異なります。必ずしも本記事の内容で受付してもらえるとは限らないことに注意が必要です。

疎明資料の一例

  1. 賃貸借契約書:あなたが現在、物件を適法に占有していることの証明
  2. 上申書(理由書):前オーナーとの連絡不通や営業実態がないことを文書化して説明したもの
  3. 現地写真(複数枚):看板の撤去や内装変更の状況を示す写真
  4. その他の補強資料:電気・ガスの名義変更、管理会社の証明書など

これらを組み合わせて「前の店は既に存在しない」という事実を立証し、警察署の担当官と交渉します。

警察署ごとに運用が異なる点に注意

大阪府内でも、所轄警察署によって対応が異なります。

  • すぐに受理してくれる署
  • 実地調査を経てからでないと受理しない署
  • 上申書の書式や添付資料に独自の要求がある署

居抜き物件のもう一つの落とし穴|設備の適法性

「前の店がやっていた=合法」とは限らない

「前のバーも深夜営業していたから、この設備なら問題ないはず」――これも危険な思い込みです。

よくある違法状態の例

  1. 届出後の無断改造:個室ブースを後から増設、見通しを妨げる高い仕切りを設置など
  2. 禁止設備の残存:大阪府では基本的に禁止されている調光器(スライダックス)が残っている
  3. 前回の申請時に虚偽の内容で届出をした: 前オーナーが警察に虚偽の資料などを用いて手続きをし、違法な状態で営業していた

あなたがこれを「居抜き」でそのまま引き継ぎ、営業を開始することはできません。

また、依頼を受けた行政書士が虚偽の資料によって申請をすることも出来ません。

「前のオーナーはこの設備で警察の検査もクリアしたと言っている」と主張したところで、今回も大丈夫だという根拠にはならないのです。

「たまたま違法箇所が見逃されていたからといって、直ちにそれ自体が合法になる事はない」ということに留意しておく必要があります。

居抜きでも図面の引き直しは必要

たとえ設備を変更しなくても、

  • 現在の法令に照らして適法か
  • 警察の検査基準をクリアできるか

を専門家の目でチェックし、届出用の図面を正確に作成する必要があります。

前オーナーから受け取った古い図面は、現況と一致していないことも珍しくありません。

居抜き物件での深夜営業届出|手続きの流れ

スムーズに開業するための正しい手順を確認しておきましょう。

1
物件調査・リスク診断

・前の店の廃業届が出ているか確認
・設備の適法性チェック(現地調査)
・図面と現況の照合

2
前店舗の廃業処理

・前オーナーに廃業届の提出依頼
・連絡不能な場合は疎明資料の準備と警察折衝

3
新規届出の準備

・届出書類一式の作成
・図面作成(配置図・客室、営業所求積図・音響照明配置図・求積一覧表など)
・添付書類の収集(賃貸借契約書、使用承諾書、用途地域証明書など)

4
届出提出〜開業

・所轄警察署へ届出
・受理後10日程度で営業開始可能

居抜き開業サポート

中嶋行政書士事務所では、深夜酒類提供飲食店の申請に関する初回無料診断を実施しています。居抜き物件での開業についてもご相談ください。

無料診断でわかること

  • ✅ あなたの店舗コンセプトで必要な許可・届出
  • ✅ 開業までの具体的なロードマップとスケジュール
  • ✅ 許可取得の費用概算

このような方はご相談ください

  • 物件を契約する前に、許可取得の可能性を知りたい
  • すでに契約済みだが、許可が取れるか不安
  • 他の行政書士に「難しい」と言われた
  • 大阪・関西エリアで開業予定

「バーの居抜き物件の記事を見た」とお伝えいただくとスムーズです。

大阪・関西エリアの複雑なエリア規制に熟知した風営法専門の行政書士が、あなたの店を守ります。