ニュースで風営法の無許可営業による摘発を見て、「逮捕のリスクを冒してまで、どうして正式に許可を取らないのだろう?」と疑問に思ったことはないでしょうか。

確かに、許可を取得すれば堂々と合法的に営業できます。それでも無許可営業を選んでしまう店には、「許可を取ると、かえって営業が成り立たなくなる」「そもそも許可が取れない立地・業態である」という事情が隠れていることが少なくありません。

この記事では、摘発される店がなぜ無許可営業に至るのかを具体的なケースごとに解説します。あわせて、令和7年(2025年)の法改正で大幅に強化された罰則についても触れます。

「取らない」のではなく「取れない」――無許可営業の2つの構図

最初に全体像を押さえておきましょう。摘発される店が無許可営業に陥る理由は、大きく次の2つに整理できます。

  1. 許可を取ると、かえって営業が成り立たなくなる
    風営法の許可(1号許可=社交飲食店など)を取ると、深夜0時〜午前6時の営業ができなくなる18歳未満の立ち入りや雇用の制限といった制約がかかります。これらが事業モデルと噛み合わず、「許可の取得で売上が下がる」状態になってしまうケースです。
  2. そもそも許可を取得できない
    風営法の許可には厳しい立地規制があり、例えば学校や病院の近くなどでは許可が下りません。また、性風俗関連の業態のように、地域によっては制度上ほぼ取得不可能なものもあります。

以下で紹介する5つのケースは、いずれもこの2つの構図のどちらか(または両方)に当てはまります。そして重要なのは、多くの場合、営業方法を見直せば適法な営業に切り替えられるという点です。制度の欠陥が原因なのではなく、利益を優先した結果として違法な選択に至っているのが実情です。

CASE1|深夜営業のスナック・ガールズバー ―「深夜」と「接待」は両立しない

バーなどのお店が深夜0時を超えてお酒を提供するには、警察へ 「深夜酒類提供飲食店」の届出をする必要があります。この届出をすれば0時以降の営業は可能になります。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。深夜酒類提供飲食店の届出をしても、風営法上の「接待」はできないのです。

スナックやガールズバーでは、特定の客の相手をして継続的に会話をしたり、カラオケで一緒に盛り上げたりといった行為が起こりがちです。これらは風営法上の 「接待」 にあたる可能性が高く、接待を行うには風営法1号許可(社交飲食店許可)が必要です。

「では、風営許可も追加で取ればいい」と思うかもしれません。ところが――

風営許可(1号許可)を取得すると、今度は深夜0時以降の営業が禁止されてしまいます。

つまり、店は次のどちらかを選ばざるを得ません。

選択肢できること諦めるもの営業形態
A深夜営業接待深夜酒類提供飲食店として営業
B接待深夜営業社交飲食店(1号許可)として営業

0時以降は売上機会が大きいため、店としては深夜も営業したいのが本音です。しかも、1号許可は立地規制などハードルが高く、誰でも簡単に取れるわけではありません。

その結果、「深夜の届出だけして深夜営業を続けつつ、こっそり接待もする」という違法な選択をしてしまう店が出てきてしまうのです。

CASE2|ショーをするお店 ―「特定遊興飲食店」でも接待はできない

かつて、有名なショークラブの経営者が無許可営業による風営法違反で逮捕される、というニュースがありました。

このお店は、深夜にショーなどの見世物を行うため 「特定遊興飲食店」の許可を取得していました。ところが、この許可は深夜0時以降の「遊興」(ショー等)を認める一方で、「接待」は認めていません。

ショークラブでは、ダンサーが各テーブルの客を回ってチップのやりとりをするといったことが起こります。その行為が「接待」にあたると警察に判断されれば、許可の範囲を超えた営業=無許可営業とみなされ、摘発につながります。

CASE1と同じ構図です。接待をするには1号許可が必要ですが、1号許可を取ると深夜営業ができなくなる。結果として、「取らない」のではなく「(深夜営業と両立できないから)取れない」ために、無許可の接待行為が発生してしまうのです。

CASE3|メイドカフェ・コンカフェ ―「18歳未満」と「深夜営業」のメリットを失いたくない

メイドカフェやコンセプトカフェ(コンカフェ)にも、許可をためらう事情があります。

風営法1号許可を取得すると、18歳未満の客を立ち入らせることができなくなり、18歳未満の従業員を働かせることも難しくなります(深夜の時間帯はとくに厳しく制限されます)。

これは、コンカフェにとって次のような痛手になります。

  • 客層が大きく狭まる……「18歳未満は入店できません」という表示は、客層を絞るだけでなく、「いかがわしい店なのかな?」という印象を与えかねません。
  • 若い従業員という強みを失う……18歳未満を含む若いスタッフを起用することが大きなアドバンテージとなっていますが、許可を取ると、この強みを活かせなくなります。
  • 深夜営業ができなくなる……深夜酒類提供飲食店の届出であれば夜中の営業も可能ですが、1号許可では0時以降は営業できません。

こうした営業上のメリットを手放したくないために、「接待にならないギリギリのライン」を狙って営業する店が多いのが実情です。しかしこの線引きを誤れば、やはり違法営業として摘発されてしまいます。

CASE4|立地規制で、そもそも許可が取れない地域

風営法の許可には 立地規制(場所的要件) があります。学校・病院・図書館など(保全対象施設といいます)から一定の距離内では、原則として許可が下りません。営業できる場所そのものが法律で限定されているのです。

そのため、すでに営業している店が後から許可を取ろうとしても、周囲の環境要件を満たさず申請が認められない――というケースが発生します。

結果として「許可を取りたくても取れない」状態になり、無許可営業を続けてしまうのです。出店前に立地を調べておけば防げたはずのトラブルであり、開業前の立地調査がいかに重要かを示す典型例といえます。

🔗 関連記事:立地規制の詳しい仕組みは、営業可能エリアの解説記事をご覧ください。

CASE5|違法メンズエステ ― 制度上、許可を取る術がない

性風俗に関連する営業は、多くの自治体で非常に厳しく制限されています。とくに店舗型の性風俗店は、新規の出店が事実上できない地域が大半です。

そのため、店舗型のマッサージ店を装った違法なメンズエステなどは、そもそも許可を取る制度的な術がなく、無許可営業をするしかない、という構図になっています。

一方、無店舗型の営業(派遣型など)は比較的規制が緩いため、現在ではこちらが主流になっています。ただし、無店舗型を名乗っていても、特定のマンションやホテルで継続的に施術を行わせるなど、実態が「店舗型」とみなされれば摘発の対象となります。「無店舗型だから大丈夫」という思い込みは危険です。

無許可営業の罰則は、令和7年改正で大幅に強化された

「グレーゾーンだから大丈夫」「バレなければいい」という発想は、年々通用しなくなっています。風営法は 令和7年(2025年)6月28日の改正により、無許可営業などに対する罰則が大幅に引き上げられました。

無許可で風俗営業(接待を伴う営業)を行った場合の罰則は、次のとおりです。

  • 個人5年以下の拘禁刑、または1,000万円以下の罰金(併科あり)
  • 法人:両罰規定により、3億円以下の罰金

無許可営業は、一度の摘発で前科がつき、高額な罰金が科されるおそれがあります。その後の事業継続や別事業の許可取得にも長く影響します。「少しくらいなら」という安易な判断が、取り返しのつかない結果を招きかねません。

🔗 関連記事:令和7年にはこのほか、11月28日施行の改正で欠格事由の範囲も拡大されています。詳しくは 【R7年11月改正】欠格事由の範囲が拡大。「身内」の会社に欠格者がいる場合は注意 をご覧ください。

まとめ

  • ニュースで見る無許可営業の多くは、「取らない」のではなく「取れない」事情を抱えている
  • とくに 「深夜営業」と「接待」は両立しない。深夜酒類提供飲食店の届出では接待ができず、1号許可を取ると深夜営業ができなくなるため、板挟みになって違法な選択をしてしまう店が出る(CASE1・CASE2)
  • コンカフェ等は 18歳未満の集客・雇用、深夜営業というメリットを失いたくないために、接待ギリギリの営業をしてしまう(CASE3)
  • 立地規制で取得できない、性風俗関連で制度上取れないといった、構造的に許可が出ないケースもある(CASE4・CASE5)
  • ただし、多くは営業方法を見直せば適法な営業に切り替えられる。無許可営業の罰則は令和7年6月28日の改正で大幅に強化されており(個人は最大1,000万円、法人は最大3億円)

営業形態や許可の要否に少しでも疑問があれば、まず現状の営業内容を整理し、必要に応じて専門家へ相談することをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q
なぜ摘発される店は、最初から許可を取らないのですか?
Q
深夜酒類提供飲食店の届出をすれば、接待をしてもいいのですか?
Q
1号許可を取れば、深夜0時以降も営業できますか?
Q
すでに営業している店でも、後から風営許可は取れますか?
Q
無許可営業をすると、どのくらいの罰則がありますか?

手続きにお困りの際は

許認可の手続きは複雑で、ご自身で対応される場合は法令の学習に多くの時間がかかります。不許可になれば、それまでの費用や労力が無駄になるリスクもあります。
ご自身での申請に不安がある場合やお急ぎの場合は、どうぞ遠慮なく当事務所までご相談ください。立地調査から図面作成、警察署との折衝まで、事業開始に必要なすべてをワンストップで支援します。