キャバクラやガールズバー、コンカフェやスナックといった社交飲食店、さらには雀荘やゲームセンター、アミューズメントカジノまでー風営法上の許可が必要なお店は、どこでも自由に営業できるわけではなく、一定のエリアでは営業が禁止されています。

では「営業可能なエリア」をどうやって見極めればよいのでしょうか。役所に「ここでキャバクラを営業できますか?」と直接尋ねても、明確な答えをもらうことはできません。

なぜなら、営業の可否は単に地図上で判断できるものではなく、条例や関連法令の知識、徒歩による予定地周辺の調査、そして判断に対する責任が伴うため、一言で答えられるものではないからです。

本記事では前半の記事で解説した用途地域の制限に引き続き、風営法上のエリア制限を詳しく解説します。

営業可能なエリアを見極めるためには、大きく分類すると下記の2つの理解が必須です。
②の保全対象施設については、別記事で解説しています。

  1. 用途地域の制限 
  2. 保全対象施設  ←いまこの記事

保全対象施設

保全対象施設とは学校や病院など、周囲の風俗環境を守る必要のある施設をいい、都道府県の条例で定められます。

風営許可を取得しようとする店舗の周辺に保全対象施設が存在する場合、その場所で許可を受けることはできません。また、将来的に保全対象施設の用に供すると決定した土地の周囲についても同様に制限がかかります。

100メートルの範囲制限に注意

大阪府の条例では、保全対象施設の100m以内の範囲に営業所を設置することが出来ません。
ただし、保全対象施設が商業地域にある場合は50m以内の範囲に軽減されます。

この確認に少しでも見落としがあると、不許可は確実です。何とか許可してもらう代替方法もありません。 結果として、店舗の移転を余儀なくされ、オープン準備に投じた内装費や人件費など多額のコストが無駄になってしまいます。

どの施設が保全対象施設にあたるのか?

保全対象施設から一定の範囲内では、営業所を設置することはできません。しかし、そもそもどのような施設が保全対象施設に該当するのかを理解していなければ、調査自体が行えません。

そこで、大阪府の条例を参考に、具体的にどのような施設が対象となるのか確認していきましょう。

大阪府風営条例(制限地域の規定)
  1. 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校若しくは同法第百三十四条第一項に規定する各種学校のうち主として外国人の幼児、児童、生徒等に対して教育を行うもの、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)第二条第七項に規定する幼保連携型認定こども園、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項に規定する保育所又は医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の五第一項に規定する病院若しくは同条第二項に規定する診療所(患者を入院させるための施設を有するものに限る。以下同じ。)の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む。以下同じ。)の周囲おおむね百メートル(当該施設の敷地が都市計画法第八条第一項第一号に規定する商業地域にある場合にあっては、当該施設の敷地の周囲おおむね五十メートル)の区域。ただし、公安委員会規則で定める区域を除く。

学校

学校などの施設は保全対象施設となっています。

その他にも、学校教育に類する教育を行うものの中で、外国人の幼児、児童、生徒等に対して教育を行うものに関しても同様の扱いです。

学校教育法上の「学校

・幼稚園・小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校・大学・高等専門学校

専門学校は「学校」には含まれません。法令に規定される「学校」とは学校教育法一条に規定される、いわゆる「一条校」を指すためです。

一条校に分類されるのであれば、通信制高校であっても保全対象施設である「学校」に変わりません。

また、通信制高校には「サポート校」と呼ばれる、卒業に向けたサポートを目的としたものがあります。
サポート校は繁華街のビルの一室にあることもありますが、学校教育法上の高校ではないため、保全対象施設にはあたりません。

学校関連の法令
  • 学校教育法
    • 第一条 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。
    • 第百二十四条 第一条に掲げるもの以外の教育施設で、職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ることを目的として次の各号に該当する組織的な教育を行うもの(当該教育を行うにつき他の法律に特別の規定があるもの及び我が国に居住する外国人を専ら対象とするものを除く。)は、専修学校とする。
    • 第百三十四条 第一条に掲げるもの以外のもので、学校教育に類する教育を行うもの(当該教育を行うにつき他の法律に特別の規定があるもの及び第百二十四条に規定する専修学校の教育を行うものを除く。)は、各種学校とする。

児童福祉施設

児童福祉施設に関連するものは保全対象施設となっています。

児童福祉施設

・助産施設・乳児院・母子生活支援施設・保育所・幼保連携型認定こども園・児童厚生施設・児童養護施設・障害児入所施設・児童発達支援センター・児童心理治療施設・児童自立支援施設・児童家庭支援センター及び里親支援センター

児童福祉施設
  • 児童福祉法 第七条
    • この法律で、児童福祉施設とは、助産施設、乳児院、母子生活支援施設、保育所、幼保連携型認定こども園、児童厚生施設、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、児童心理治療施設、児童自立支援施設、児童家庭支援センター及び里親支援センターとする。
  • 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律 第二条7項
    • この法律において「幼保連携型認定こども園」とは、義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとしての満三歳以上の子どもに対する教育並びに保育を必要とする子どもに対する保育を一体的に行い、これらの子どもの健やかな成長が図られるよう適当な環境を与えて、その心身の発達を助長するとともに、保護者に対する子育ての支援を行うことを目的として、この法律の定めるところにより設置される施設をいう。

助産施設は2種類ある

法令によれば児童福祉施設のうち、助産施設も保全対象施設に含まれますが、これには第一種助産施設と第二種助産施設という区分が存在します。

下記の条例によると、第一種助産施設は病院に含まれますが、第二種助産施設は含まれません。※後述しますが「病院」は保全対象施設に含まれます。したがって、保全対象施設に該当するのは第一種助産施設のみということがわかります。

助産施設の種類
  • 大阪府児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例 第二十二条
    1. 助産施設は、第一種助産施設及び第二種助産施設とする。
    2. 第一種助産施設とは、病院(医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の五第一項に規定する病院をいう。以下同じ。)又は診療所(同条第二項に規定する診療所をいう。以下同じ。)である助産施設をいう。
    3. 第二種助産施設とは、助産所(医療法第二条第一項に規定する助産所をいう。)である助産施設をいう。

病院・診療所

病院や診療所などは保全対象施設に含まれます。条例中の「病院」や「診療所」については医療法に定義されており、それぞれ受け入れ可能な患者の数によって区別されています。

街で見かける歯科は保全対象施設に含まれるのか?

結論から言うと、街の歯科医院は原則として保全対象施設に含まれますが、入院設備がある場合に限ります。

医療法によれば、「病院」とは20人以上の患者を入院させるための施設を備えているものを指します。街中でよく見かける歯科医院が、そのような大規模な入院設備を有しているとは考えにくいため、一般的な歯科は「病院」には該当しないことが分かります。

では「診療所」の場合はどうでしょうか。診療所とは「入院施設を持たないもの、または19人以下の患者を入院させるための施設を有するもの」と定義されています。したがって、多くの歯科は「病院」ではなく「診療所」に区分されることになります。さらに、風営法条例では診療所も保全対象施設に含めていますが、その範囲は「入院設備を有するものに限る」とされています。

以上を踏まえると、”街の歯科医院は「診療所」に該当するため保全対象施設に含まれるが、入院設備を備えている施設のみが保全対象施設に含まれる”ということになります。

病院関連
  • 医療法 第一条の五
    1. この法律において、「病院」とは、医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であつて、二十人以上の患者を入院させるための施設を有するものをいう。病院は、傷病者が、科学的でかつ適正な診療を受けることができる便宜を与えることを主たる目的として組織され、かつ、運営されるものでなければならない。
    2. この法律において、「診療所」とは、医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であつて、患者を入院させるための施設を有しないもの又は十九人以下の患者を入院させるための施設を有するものをいう。

規制を受けない特別区域

条例で定める保全対象施設から一定距離の区域においては、風営許可を取得することは出来ません。

しかし、下記の表の地域内に営業所が位置している場合は、保全対象施設の規定を無視して許可を取得することが可能となります。

大阪府の特別区域

大阪市北区

梅田一丁目(1番から3番まで及び11番に限る)
角田町(1番及び5番から7番までに限る)
神山町(2番から10番までに限る)
小松原町
曾根崎一丁目
曾根崎二丁目
曾根崎新地一丁目
太融寺町
兎我野町
堂島一丁目
堂島浜一丁目
堂山町(1番から13番まで、16番及び17番に限る)及び西天満六丁目の区域

大阪市中央区

心斎橋筋一丁目(5番及び6番に限る。)
心斎橋筋二丁目
千日前一丁目
千日前二丁目
宗右衛門町
道頓堀一丁目(1番から10番までに限る。)
道頓堀二丁目
難波一丁目、難波二丁目
難波三丁目、難波四丁目
西心斎橋二丁目(3番から8番まで及び13番から16番までに限る。)
東心斎橋一丁目(5番、6番、15番及び16番に限る。)及び東心斎橋二丁目の区域

おわりに

近くでキャバクラが営業しているから大丈夫、同じビルのテナントで営業しているお店があるから大丈夫、などと安易に考えるべきではありません。他のお店が許可を取得した当時は近くに保全対象施設がなかった場合でも、その後に施設が建てられることがあります。また、同じビル内でも端と端で用途地域の範囲が異なる場合もあります。

さらに、歯医者は病院ではないから大丈夫と思っていても、先に述べた通り、入院施設のある歯医者は保全対象施設に含まれます。人から聞いた話で「歯医者が近くにあっても営業許可が取れたよ」と知ったとしても、それが必ずしも正しい知識とは限りません。

例を挙げるとキリがありませんが、起こりうる事態を想定する想像力が大切です。

手続きにお困りの際は、お気軽にご相談ください

許認可の手続きは複雑なことが多く、ご自身で対応される場合は、法令学習にそれなりの時間を費やす必要があります。また、不許可の際には多額の費用が無駄になったりと、高いリスクを伴うこともあります。

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