社交飲食店(キャバクラ、ラウンジ、ホストクラブ、スナックなど接待を伴うお店)を始めるには、警察署に対し、風営法上の許可を申請する必要があります。

この許可は、要件の判断や保全対象施設の調査、測量・図面作成、警察とのやり取りなど、他の許可と比較しても特に専門的で難易度も高めの許可となっています。

本記事では、社交飲食店のオープンを検討している方に向け、申請に必要な要件や実務的な手続きの流れなど、許認可の全体像をわかりやすく解説します。

1. 社交飲食店( 風営法1号許可)とは?

社交飲食店(風営法1号許可)の法令上の定義は「キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業」としています。

風営許可には1号~5号の分類がありますが、キャバクラ、ホストクラブ、ラウンジ、スナック、ガールズバー、コンカフェなど、営業内容に「接待」が伴うお店は社交飲食店と呼ばれ、風営法上の「1号許可」を取得する必要があります。

接待とは?

接待とは、客と会話、談笑したり、ショーを見せたり、一緒にゲームや遊びに興じる場合など、「特定の客(または客のグループ)に対して、料理の提供などの飲食に関連する行為以上の会話やサービスを行うこと」を指します。

あくまで営業内容によって判断するため、単なる飲食店やバー、居酒屋でも、接客の内容によっては「接待」に該当する可能性があるため、注意が必要です。

バーはバーでも、客と継続的な会話や談笑をするなら「接待」を行うための許可が必要ですが、単に客の注文に応じてドリンクを提供するだけなら許可は不要といえます。

接待については下記の記事で詳しく解説しています。

許可を得ないで営業した場合のリスク

近年風営法は厳罰化傾向にあり、無許可営業には重い罰則が科せられます。罰則覚悟で営業したとしても、それまでの利益が全て吹き飛ぶような罰則が与えられますので、リスクに対するメリットは少ないといえるでしょう。

重くなった罰則

風営法は近年の改正(2025/6/28施行)により、罰則が厳しくなりました。罰金200万円以下だったものが、法人の場合3億円以下の罰金になるなど、かなりの厳罰化です。 これまで以上に違法営業のリスクが高くなっている為、適法な営業をする為の必要な知識を備えておくことが大事です。

許可取得のデメリット

社交飲食店の許可を取得することによって、下記のような営業上のデメリットが存在します。

  • 深夜0時~6時迄の営業が出来なくなる。
  • 18歳未満の立ち入り禁止を徹底しなければならない。
  • 客引き行為が風営法違反となり、厳しく罰せられる。 など

また、立地制限の存在により取得可能な地域も限られるため、簡単に取得出来る許可ではありません。だからといって無許可営業をしてしまうと、多大なリスクを背負うことを理解しなければなりません。

無許可営業について解説した記事

2.手続きの概要

許可取得にかかる期間

社交飲食店の許可を取得するには、大阪の場合「申請をしてから土日祝日を含まず45日間」が役所の目安となっています(概ね2か月)。 「申請をしてから」ということは、内装工事や飲食店営業許可の取得などの準備期間は含まれません。

また、風営法の許可申請は、基本的に営業が可能な状態で行う必要があるため、内装図面をもとに着工前の段階で申請することはできません。見込みの状態で申請を行うと、申請の取り下げのリスクがあり、結果として余計な時間と手間がかかる可能性があります。

申請手数料

新規申請:24,000円

手続き先(警察署)

大阪市の警察署管轄一覧(クリックで開閉)
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3. 許可取得の要件

許可審査では大まかに次の観点で適合性が確認されます。

  1. 人的要件(申請者・役員・営業管理者等の欠格事由)
  2. 場所的要件(用途地域や保全対象施設からの距離)
  3. 構造・設備要件(客室面積、客室の見通し、出入口、照度、騒音対策等)
  4. 運営上の遵守事項(広告、料金表示、未成年者の立入禁止、都道府県条例による制限など)

また、社交飲食店の許可取得には前提として、飲食店の営業許可が必要です。飲食店営業許可についてはこちらの記事で紹介しています。

1) 人的要件(許可を取得できない人)

申請者や法人の役員、営業の管理者が破産している場合や、一定の犯罪歴、暴力団関係者である場合などは欠格となり許可は得られません。また、許可書類で身分や経歴の確認が行われるため、詐称はできません。

2) 場所的要件(用途地域制限・保全対象施設との距離)

風営法上の許可が必要なお店は、どこでも自由に営業できるわけではなく、一定のエリアでは営業が禁止されています。 禁止地域に営業所を構えてしまうと、許可申請の際に不許可とされることは確実です。

事前に許可を取得できない

風営法の許可は、「許可を取得してから開店準備を行う」ものではなく、「営業できる状態を整えたうえで申請を行う」仕組みです。 そのため、不許可となった場合には、内装工事費や人件費など、開店準備にかけたコストがすべて無駄になってしまいます。

こうした事態を防ぐには、関連法令を正しく理解し、事前に綿密な調査を行うことが不可欠です。 具体的には、①用途地域の制限 と ②保全対象施設 について、しっかりと把握しておく必要があります。

用途地域制限

用途地域(都市計画法で定められた地域)によっては、風営法の許可を取得できないエリアが定められています。一般的に、商業系の地域であれば許可の取得は可能ですが、住居系の地域ではほとんどの場合、許可が認められません。

ただし、指定道路の端から25メートル以内の範囲や、駅の出入口から50メートル以内の範囲であれば、例外的に許可が認められる場合があるなど、例外的なルールも存在します。

また、風営法上では許可が可能な地域であっても、建築基準法など他の法律によって制限を受けることがあるため、十分な注意が必要です。

保全対象施設

保全対象施設と呼ばれる学校や病院などの施設から一定の範囲内では風営許可を取得することはできません。

例として大阪府の条例では、保全対象施設の100m以内の範囲に営業所を設置することが出来ません。(ただし、保全対象施設が商業地域にある場合は50m以内の範囲に軽減されます)

「街で見かける歯科医院は、病院に含まれるのか?」といったように、具体的にどの施設が保全対象施設に該当するのかについては、法令を正しく理解する必要があります。この点は専門性の高い要素であり、慎重な確認が求められます。

3)構造・設備要件

公安委員会規則・施行規則等で詳細が定められています。代表的な基準は次の通りです。※下記は要点で、細かな測定方法・例外規定がありますので図面作成時に確認が必要です。

  1. 客室床面積
    和風の客室は1室あたり9.5㎡以上、それ以外は1室あたり16.5㎡以上とする必要があります。(客室が1室のみの場合はこの限りではありません)
  2. 外部から見えない構造
    客室の内部が営業所の外部から容易に見通せない構造であること(窓・出入口の見え方、目隠し等の措置が審査されます)
  3. 見通しを妨げる設備を設けない
    客室内部に背の高い仕切り等で見通しを妨げる設備を置かないこと。1メートルを超える衝立などは設置不可。透明なアクリル板であったとしても、布等を被せることで目隠しになる場合などは認められません。
  4. 個室に施錠設備を設けない
    客室の出入口に施錠設備を設けないこと(但し、営業所外に直接通ずる出入口等、一部例外あり)。VIPルームなどに鍵を設置することはできません。
  5. 照度(明るさ)
    規定の測定法により営業所内の照度が5ルクス以下とならないように維持する構造・設備が求められます。
  6. 騒音・振動の対策
    都道府県条例等で定める騒音・振動の基準を満たす構造・設備(防音、機械配置等)であること。
  7. 公序良俗に反する装飾物の排除
    善良な風俗や清浄な風俗環境を害するおそれのある写真・広告物・装飾等を設けないこと。

4. 測量・図面の作成

最大の難所

風営法上の許可申請において、最もつまずきやすいのが測量と図面作成です。
自力で申請を進めようとしたものの、この工程の難しさに直面し、手続きを断念される方も多くいらっしゃいます。

精密に測量したうえで図面を作成しなければ、警察署における実査(立入検査)に合格することが出来ません。そのため、見込みの完成図で申請することは基本的に不可能なため、注意が必要です。

他の図面を流用できない

ここで求められる図面は、内装工事の際に業者が作成したものや、飲食店営業許可で保健所に提出した図面とは仕様が異なり、使い回しができません。

というのも、飲食店営業許可は保健所が所管するのに対し、風営法許可は警察署が管轄です。
提出先が異なるため、図面の記載項目や重視されるポイントも変わってきます。さらに、地域によって測量方法や図面の書き方に細かな違いがある点にも注意が必要です。

必要図面一例

  • 営業所の配置状況を記載した図面(座席、テーブル等)※平面図、配置図
  • 照明、音響、防音設備を記載した図面 ※音響設備図
  • 営業所、客室面積の求積図
  • 求積の計算根拠の一覧 ※求積一覧表 
  • 営業所の存在するフロアの平面図  など
図面作成手順のイメージ
図面作成イメージ

5. 実査(立ち入り検査)

実査は、警察や風俗環境浄化協会が現地を確認するための立入検査です。面積や出入口・窓の位置、仕切りの高さ、照度、防音対策、避難経路や消防設備など、法令や施行規則で定められた技術的・運営的要件が満たされているかがチェックされます。実査で不適合が見つかると補正指示や、最悪の場合は不許可となるため、準備を整えて臨むことが重要です。

図面と現状をチェックされる

4. 測量・図面の作成で作成した図面と、営業所の現況が一致しているかを確認されます。

その場で測定された寸法が図面と異なる値であった場合は、補正を求められたり、不許可の理由となってしまいます(5mm程度の誤差でも指摘を受ける場合もあります)。また、テーブルやイスの数や配置も図面と一致させておかなければなりません。

工事途中の段階で完成見込みの図面による提出が難しいという理由がここにあります。

構造要件をチェックされる

3) 構造・設備要件で説明した営業所の構造要件を満たしているか確認されます。照明は調光器(スライダックス)付きではないか、不健全な広告やポスターが掲示されていないか、見通しを妨害する100cm以上のものが置かれていないかなどを厳しくチェックされますので、事前に入念な確認をしておく必要があります。

その他チェックポイント

  • 18歳未満立ち入り禁止の表示がされている
  • 見やすい場所に料金やシステムメニューが掲示されている
  • 従業員名簿の設置
  • 消防設備、避難用設備等の設置 など

6. 許可を取得したあとの注意

実査に合格すれば、いよいよ風営法の営業許可を取得することができます。 ただし、本当に重要なことは許可の取得ではなく、適正な運営を継続することです。

営業開始後に、客室の構造や設備の位置などの変更が生じた場合は、原則として変更手続きが必要になります。変更内容が軽微な場合は事後の届出で対応できるケースもありますが、内容によっては事前に承認を受けなければならない場合もあるため注意が必要です。

また、許可取得後は風営法および各自治体の条例に基づいた営業が求められます。違法な深夜営業を行わないことはもちろん、キャバクラやラウンジなどの社交飲食店では「客引き行為」が禁止されています。さらに、広告や宣伝の内容にも一定の制限があり、公序良俗に反する表現は指導・処分の対象となることがあります。

許可を取った後も、日々の営業が法令に適合しているかを定期的に確認し、必要に応じて専門家へ相談することが大切です。 正しい知識を前提に、健全で安心できる店舗運営を心がけましょう。

手続きにお困りの際は、お気軽にご相談ください

許認可の手続きは複雑なことが多く、ご自身で対応される場合は、法令学習にそれなりの時間を費やす必要があります。また、不許可の際には多額の費用が無駄になったりと、高いリスクを伴うこともあります。

ご自身での申請に不安がある場合や、お急ぎの場合は、どうぞ遠慮なく当事務所までご相談ください。あなたの悩みを解決し、そして確実にサポートいたします。