役所から各種許認可を受けようとしている方にとって、「許可」と「届出」という言葉は頻繁に登場します。しかし、この二つの違いを正しく理解していないと、手続きに支障が出たり、思わぬトラブルに発展したりする可能性があります。
本記事では、代表的な手続きである「飲食店営業許可」と「深夜営業の届出」を例に取り上げ、「許可」と「届出」の違いを分かりやすく整理しました。これから開業を予定している方や、専門知識を深めたい方にとって実務に直結する内容となっています。
基本の整理 — 「許可」と「届出」の法的な違い
許可(許認可制度)とは — 行政による審査と裁量
「許可」とは、法律で原則禁止されている行為を、行政庁(役所など)が審査のうえで特定の者にだけ認める行為を指します。たとえば飲食店営業は、食品衛生法に基づき保健所の許可を得なければ営業できません。
許可には「審査」があり、設備基準や人員体制など法令で定められた要件を満たし、時には行政による現地検査で適合していることを確認する必要があります。このため「申請したら必ず通る」というものではなく、不備があれば許可が下りません。
さらに、行政庁には「裁量」と呼ばれる権限があります。これは、各役所が地域の状況や許可の性質を踏まえて、申請を認めるかどうかを判断できる余地のことを意味します。
そのため、申請者としては「要件を満たしているはずだ」と考えていても、役所側の判断では「適合していない」とされ、許可が下りないというケースも珍しくありません。
届出とは — 形式要件の確認で効力発生
一方の「届出」は、一定の事項を行政庁に報告することで義務を果たす制度です。許可と異なり、原則として行政庁の審査や裁量は伴わず、届出書類が受理されれば効力を生じます。
ただし、届出を怠った場合や虚偽の届出をした場合には、行政処分や罰則を受ける可能性があるため、「簡単な手続きだから軽視してよい」というものではありません。
「許可」と「届出」の取り扱い
制度設計上、「国民の生命・健康・安全に直接的な危険が及ぶ可能性のある行為」は許可制が採用されることが多く、逆に「事業者の把握や監督を目的とする場合」は届出制が採用されます。
飲食店営業は食品衛生上のリスクが高いため許可制、深夜営業は治安維持を目的とするため届出制、という整理です。
一般的には「許可」のほうが手続きのハードルが高いと考えられがちですが、必ずしもそうとは限りません。たとえば「飲食店営業許可」と「深夜営業の届出」を比べると、実際には「深夜営業の届出」のほうが、必要な書類や手間が多く、難易度も高くなっています。
事例で比べる — 飲食店(許可)と深夜営業(届出)
飲食店営業許可(保健所)
飲食店を開業する際には、まず所轄の保健所に「飲食店営業許可」を申請します。申請書のほか、店舗の図面、設備の概要、営業者の身分証などを提出し、現地検査を受ける流れです。
検査では、調理場と客席が区分されているか、手洗い設備が十分か、換気・照明・衛生面の基準を満たしているかなどが確認されます。不適合があれば改善を求められ、是正後に再検査を受けて初めて許可がおります。
申請から許可が下りるまでには3週間〜1か月程度かかる場合が多いため、オープン日から逆算して準備することが重要です。
深夜酒類提供飲食店営業の届出(警察)
バーや居酒屋で深夜0時以降に酒類を提供する場合には、「深夜酒類提供飲食店営業の届出」が必要です。これは警察署生活安全課に提出します。
届出に必要なのは、店舗の測量図面、申請書、誓約書などで、提出して受理されれば営業が可能になります。許可とは異なり、警察の審査を待つ必要はありません。
ただし、その場で「届出済証」が交付されるわけではありません。発行までには一定の期間が必要となるため、営業開始予定日の10日前までに提出することとなっています。
また、届出をせずに深夜営業を行った場合は無届営業として処罰対象となります。
他の許認可・届出の例
- 風俗営業許可
バーやスナック、キャバクラなどで「接待」を行う場合は、風営法上の許可が必要になります。こちらは許可基準が非常に厳しく、求められる書類の種類も多いため、難易度が高く専門性の高い許可となっています。 - 屋外広告業許可
大きな宣伝看板や目を引く派手な広告は、周囲の環境に影響を与える可能性があります。その為、事前にデザインなどを提出し、不適切でないか審査をしてもらう必要があります。 - 税務・労働関係
飲食店の開業時には、税務署への開業届、労働者を雇う場合の労働基準監督署やハローワークへの届出が必要です。許可と違い審査はありません。
許可が得られなかった場合
申請を行った結果、行政庁から「不許可」の判断を受けてしまうケースもあります。こうした場合でも、ただ不許可を受け入れるしかないというわけではなく、法律上の救済手段が用意されています。
行政不服審査法による不服申し立て
まず、一般的な手段として「行政不服審査法」に基づく不服申し立てが可能です。
不服申し立てとは、不許可処分を行った行政庁の上級庁に対し、処分の取消しや変更を求める方法です。
審査請求を行い審理を経て、最終的に裁決という形で決着がつきます。
裁判による救済
不服申立ての結果に納得できない場合や、そもそも不服申立てを行わずに直接争いたい場合には、「行政事件訴訟」として裁判を起こすことも可能です。代表的なのが「取消訴訟」で、違法な不許可処分の取り消しを裁判所に求めるものです。ただし、裁判は時間や費用の負担が大きいため、実務上は不服申立てを経てから検討するケースが多いです。
まとめ
「許可」と「届出」の違いを端的にいえば、許可=審査を経て認められるもの、届出=報告して効力が生じるものです。しかし、届出だからといって軽視すべきではなく、いずれも法律に基づく義務であり、違反すれば営業停止や罰則につながります。
当事務所では、大阪を中心に各種行政手続きをトータルでサポートしています。許可申請書類の作成から、図面チェック、警察・保健所への事前相談まで対応可能です。
開業準備でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
手続きにお困りの際は、お気軽にご相談ください
許認可の手続きは複雑なことが多く、ご自身で対応される場合は、法令学習にそれなりの時間を費やす必要があります。また、不許可の際には多額の費用が無駄になったりと、高いリスクを伴うこともあります。
ご自身での申請に不安がある場合や、お急ぎの場合は、どうぞ遠慮なく当事務所までご相談ください。あなたの悩みを解決し、そして確実にサポートいたします。



